銀行員はリスケを嫌がっているわけではない
「銀行にリスケを申し込んだものの渋い顔をされた」というのはよくあるケースです。
安易にリスケしても、経営が改善されずリスケが常態化してしまっては意味がないからです。
しかし、銀行員はリスケ自体を嫌がっているわけではありません。
下記の2つの条件を満たせば、リスケには前向きに取り組んでくれる可能性が高いといえます。
①リスケの稟議を上げるための、内容が充実した経営改善計画を提出すること
リスケを行う場合、担当者がリスケの稟議書を起案することになりますが、リスケの出口戦略、
つまりどのように経営改善をしてどのように返済していくかが明確でないと、銀行としてもリスケをするメリットがないため、その点を明確にした稟議書を起案する必要があります。
しかし、社長の口頭での話だけでは稟議が通しづらく、ヒアリングにも時間がかかります。
銀行員も日々忙しく、銀行内での評価にもつながらない仕事は誰でも消極的になってしまいます。
銀行員から「この社長は経営改善計画書を作ってくれないな」と判断されれば、リスケを嫌がるのは当然です。
また、銀行員自身は決算書や試算表を通じて数字面は把握しているものの、その会社が扱う商品やサービス面についてはあまりよく知らないというケースが多々あります。
したがって、経営改善計画書という形で文書化して、内容を充実させることが必要となります。
②経営改善計画が「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」(実抜計画)、または「合理的で実現可能性の高い経営改善計画」(合実計画)の要件を満たしていること
銀行は融資先に対する格付け(債務者区分)を内部的に行っています。
【コラム】『金融機関からの格付け(債務者区分)と借りやすさ』
リスケを行うと債務者区分が変わってしまい、「貸倒引当金」を積み増す必要が生じ、いわゆる不良債権扱いとなることで、銀行の財務状況が悪化してしまいます。銀行としてはこれを非常に嫌がります。
しかし、経営改善計画書が「実現可能性の高い抜本的な経営改善計画」(実抜計画)、または「合理的で実現可能性の高い経営改善計画」(合実計画)の要件を満たすことで、不良債権扱いしなくても良いという金融庁の指針があります。したがって、この要件を満たすことで銀行としてはリスケに応じやすくなります。
※「実現可能性の高い」とは以下の要件を全て満たすことです。
・必要な関係者との同意が得られていること
・債権放棄などの支援の額が確定しており、追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
・計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること
※「抜本的な」とは以下の要件を全て満たすことです。
・経常利益を3年以内を目途に黒字化
・実質債務超過を5年以内を目途に解消(※合実計画の場合は10年以内)
・計画終了時点で有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下
※2020年追記
金融検査マニュアルが廃止され、上記の「債務者区分」は以前ほどに厳格に判定されることはなくなりました。ただし、依然として経営改善計画書の重要性は変わりません。
まとめ
リスケには経営改善計画書が必須です。
しかし、自身で経営改善計画書を作った経験のある経営者はほとんどいないでしょうし、また銀行も社長一人で経営改善計画書を作るのはなかなか難しいと思っており、できれば経営改善に詳しい専門家をつけて欲しいと思っています。
経営改善計画書を作る際には、事業再生や経営改善の専門家にご相談されることをおすすめいたします。
なお、専門家費用の2/3の金額を国から補助してくれる制度もあります。
関連ページ:経営改善・リスケ交渉のサービス
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