金融機関は、金融庁の金融検査マニュアルに基づいて融資先の格付けを行っています。
この格付けを「債務者区分」と呼びます。
「債務者区分」と借りやすさについて解説します。
5つの債務者区分
債務者区分は以下の5つに分けられます。
・正常先
・要注意先
・破綻懸念先
・実質破綻先
・破綻先
金融機関はこれらの格付けに基づき、融資方針を決定しています。
「正常先」の借りやすさ
正常先とは、業績が良好で、財務内容にも問題がない企業を指します。
具体的には、黒字で、債務超過ではないということです。
多少の赤字を出していても、毎月の返済を滞りなく行っていれば、正常先と認められるケースが多いと思われます。
正常先であれば、通常必要な運転資金や合理的な設備資金なら、ほぼ問題なく融資がおります。
資金調達を円滑に行うためには、「正常先」の格付けを維持することが重要です。
「要注意先」の借りやすさ
「要注意先」はさらに、「要管理先以外の要注意先」と「要管理先」に分けられます。
「要管理先以外の要注意先」とは、「金利減免など貸出条件に問題がある、元本返済延滞など債務の履行状況に問題がある、業況が低調、財務内容に問題がある」企業を指します。
具体的には、単独期の赤字、少額の繰越欠損がある状態です。
「要管理先」は上記に加えて、「3ヶ月以上の延滞」がある企業を指します。
具体的には、連続赤字、繰越欠損、債務超過の状態です。
「要管理先以外の要注意先」は、正常先に比べやや審査が厳しくなりますが、借りることはできます。
特に、審査が比較的緩い地域金融機関では借りられる見込みは大きいといえます。
今後の好転事象があれば、積極的にPRすることが重要です。
「要管理先」の区分からは、借りることがかなり難しくなります。借りるためには、「要管理先以外の要注意先」「正常先」へと格上げできるための説得材料が必要となります。
または、追加融資は諦め、「リスケ」(返済減額交渉)を行い、その間に経営改善を行うべきです。
「破綻懸念先」の借りやすさ
「破綻懸念先」とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きい企業を指します。
具体的には、連続赤字が続き、大幅な債務超過である状態です。
破綻懸念先に陥ると、借りることはもちろんできず、担保不動産の回収や担保預金の相殺などまで行われてしまう可能性があります。
実現可能性の高い「経営改善計画書」を提出することで、「要管理先」にランクアップする望みがあります。
「経営改善計画書」を作成するには、事業再生に詳しい専門家にご相談されることをおすすめいたします。
なお、「実質破綻先」「破綻先」はほぼ復活の見込みが無いとされます。
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