第二会社(別会社)による事業再生とは?詐害行為として訴えられる可能性は?

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第二会社(別会社)による事業再生とは?詐害行為として訴えられる可能性は?

河野公認会計士・税理士事務所の河野です。

これまでのコラムでご紹介したとおり、事業再生の主な手法は、一定期間のリスケ(元本返済ゼロ)+経費削減等の経営改善により利益を出し、その間に力を蓄えた後、返済を正常化させる、というものです。

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今回はそれ以外の手法として、「第二会社による事業再生」について解説したいと思います。

 

第二会社(別会社)による事業再生について

第二会社方式とは、今ある会社(旧会社)とは別の会社(新会社)を設立し、新会社に得意先・仕入先等の取引先・従業員・優良事業を移管し、借金や不採算事業だけを旧会社に残し、旧会社を破産等させる、といった手法になります。

これにより、新たな会社にて借入返済負担をなくし、再出発を図ろうというものです。

「そんなこと可能なの?」「訴えられたりしないの?(詐害行為)」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、正しい手順に則って行えば、詐害行為として訴えられることもなく、正常に事業運営を再開することが可能です。

国の機関である「中小企業再生支援協議会」でも採用されている手法です。

 

第二会社方式を進める際の手順・注意点は以下の通りになります。

1.資産・負債を正しく評価し、正当な金額で新会社が買い取る

不動産や車両などの固定資産等を相場より低い価格で新会社に譲渡すると、当然ながら詐害行為として提訴される可能性がありますので、市場価格・時価に基づいて譲渡をする必要があります。

在庫(棚卸資産)は簿価で旧会社から買い取ります。

得意先の売掛金や仕入先の買掛金も簿価で移す必要がありますが、得意先・仕入先の取引自体を新会社に移すことに対する対価は不要です。

(譲渡対価として旧会社に移した資金は、破産時に金融機関をはじめとする債権者に分配することになります。この資金を隠蔽するような行為は厳禁です。債権者の立場になって考え、債権者の利益を極力害しないように最大限の配慮を払う意識を持つことが重要です。)

買取資金がない場合は、第三者(スポンサー)から資金調達を行ったり、リースバック(売却後そのまま賃貸として借りる)を行う会社などを利用することになります。

なお、事業を移管する方法として、「事業譲渡型」と「会社分割型」がありますが(具体的な内容はここでは割愛します)、法的リスクの低い「事業譲渡型」をおすすめいたします。

 

2.旧会社の代表者は新会社の代表者・取締役・株主にはなれない

旧会社と新会社が実質同一とみなされるリスクを避けるため、旧会社の代表者は新会社の代表者・取締役・株主になることは避けたほうが良いでしょう。

新会社の代表者には、代表者の親族や従業員になってもらうのが一般的です。

なお、旧会社の代表者が新会社の従業員や顧問になり、新会社の代表者をサポートすることは可能です。ただし、過大な給料や報酬を支給することは避けたほうが良いでしょう。

 

3.旧会社の借入に代表者保証を行っている場合は代表者の自己破産も原則として必要になる

新会社に事業移管完了した後に、旧会社は破産させることが一般的な選択肢となりますが、多くの場合、代表者が会社借入の連帯保証人になっていることが多いかと思います。

会社破産すれば、その借入は代表者が返済する必要があり、その返済が難しい場合は代表者自身の自己破産も原則として必要になります。

そのため、代表者として個人資産を残すことが難しくなります。(代表者の個人資産を事前に配偶者や親族に贈与するような行為も詐害行為になります。)

「自分が犠牲になり、取引先・従業員を守る」という覚悟がないと、この決断はできないでしょう。

(なお、住宅ローンの残っている代表者の自宅不動産を守れる場合もあります。こちらはまた別のコラムで解説したいと思います。)

 

4.税金の滞納は事前に極力解消しておく必要がある

第二次納税義務といって、形式的には第三者名義の財産になっていても実質的にみてその納税者の財産と認められれば、その第三者に納税義務を負わせるという制度があります。

2の条件を満たし、別会社としての要件を満たせれば、新会社はこの第二次納税義務を負う可能性は低くなりますが、それでも税務署が旧会社やその取引先に調査を行う場合があります。

この調査が取引先からの風評被害にもつながり、最悪取引自体がなくなってしまうリスクもあります。このようなリスクを避けるためにも税金の滞納は極力解消しておいた方がよいでしょう。

 

5.黒字の事業を移す必要があり、また経営改善にも取り組む必要がある

第二会社は、「事業自体は黒字であるが、到底返しきれない借金がある」場合に有効です。

黒字の優良事業と赤字の不採算事業の両方があれば、優良事業のみ新会社に移せば良いですが、1事業しかなくその事業自体が赤字続きであれば、借金をチャラにしたとしても当然ながらいつかは破綻します。

第二会社方式は裏技でもなんでもなく、経営改善を行う必要があることには変わりありません。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?このような手法をご存じなかった方も多いのではないでしょうか。

前項でも述べましたが、第二会社は「自分が犠牲になり、取引先・従業員を守る」という覚悟が不可欠です。

なお、実際に第二会社方式による事業再生を行う際には、事業再生に詳しい公認会計士や弁護士のアドバイスを受けながら、慎重に進めることをおすすめいたします。


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河野 岳友
沖縄・大阪の融資・事業再生に力を入れている税理士です。日本政策金融公庫の創業融資には特に力を入れています。会計・税務だけでなく、資金調達や経営改善により「会社にお金が残る仕組みづくり」をお手伝いしております。また、クラウド会計やITを積極活用して、経理の効率化を推進しています。
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