生命保険って必要?税理士が考える生命保険の選び方

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生命保険って必要?税理士が考える生命保険の選び方

保険営業マンの言われるがままに何となく生命保険に入ったり、税理士に節税できるからと言われて生命保険に入っていらっしゃる方も多いと思います。
しかし、「保険は住宅の次に高い買い物」とも言われており、保険営業マンや税理士に丸投げしてしまうのは危険です。
専門家のアドバイスを受けることは大切ですが、最終的には自分自身で意思決定することが重要です。

今回の記事では、生命保険をはじめとする保険の本質と目的を考えてみたいと思います。

 

保険の本質は「少ない出費で大きなリスクに備える」

言うまでもなく、保険の目的は貯蓄でも節税でもなく、「保障」です。
特に、「事故の発生確率は小さいが、その事故が発生した時の損害が大きい」場合に保険は非常に有効です

 

「事故の発生確率は小さいが、その事故が発生した時の損害が大きい」代表例として、交通事故があります。
交通事故では自らが損を被るだけでなく、加害責任も発生するリスクがあるため、自動車保険や自転車保険は入るべきと言えます。
自転車保険は事故発生確率が非常に低いためか、下記のような月額150円から入れる保険もあります。
JCBトッピング保険:https://insurance.jcb.co.jp/cm/guide/topping.html

 

また、保険で得することは確率的にはあまりありません。
保険会社が利益を出せるように統計学を用いて「商品設計」しているためです。
そのため、保険の基本戦略としては、損をしないこと=必要最小限の保険に入ることが重要です
(「損をしないこと」というのは、保険で得をしようと考えないこと、とも言えます。)

 

必要最小限の保障額というのは家族形態や年齢によっても異なります。
例えば、独身の方は高額な死亡保障は不要ですし、小さい子供がいて配偶者の収入がない場合は、相応の保障が必要になります。
少なくとも、年齢が上がるにつれて、必要な保障額は減少していきます
ですので、常に一定の保険金が下りる「定期保険」よりも「逓減定期保険」や「収入保障保険」などを選ぶと保険料が下げられる可能性があります。

また、会社借入に対して、代表者が連帯保証している場合、万が一代表者が死亡したときに配偶者等の相続人に債務が行くため、借入金相当額の死亡保障はつけておいても良いかもしれません。
(公庫であれば、住宅ローンと同じような「団体信用生命保険(団信)」があり、団信に加入している場合は借入債務が死亡時に消えるため、別途死亡保障は不要です。)

 

なお、保険事故のリスクは以下の2つに分けることが出来ます。
・コントロールできるリスク:病気など
・コントロールできないリスク:不慮の事故など(交通事故等)

基本的には、生命保険は不慮の事故などコントロールできないリスクに起因する事故で亡くなった場合に備えるべきで、例えばがんなどの病気リスクは自分で健康管理することで、または人間ドッグなど定期的な検査により未然に発見・予防することで、「がん保険」に加入する必要性が下がってきます。

 

 

よくあるフレーズ「法人保険は法人税の節税になるから入るべき!」

「法人保険は法人税の節税で有効なので是非入るべきです」というのは正しいでしょうか?
商品によって、半損(保険料の半額が損金)・全損のものなど色々ありますが、保険料を払った期は損金になり一時的に税金が減ります。
しかし、保険金がおりた時に、益金計上つまり利益になるため、そこで税金が発生してしまいます。
ですので、課税の繰延をしているにすぎず、税金が減るわけではありません。

また、課税の繰延はキャッシュフローの改善にもなるという意見もありますが、税金は減りますがそれ以上に保険料の支払いでお金が出ていきますので、キャッシュフローの改善にはなりません。
(「お金を使わない」課税の繰延は、どんどんやるべきです。)

ですので、節税だけを目的とした法人保険の加入はおすすめできません。

ちなみに、個人で生命保険に入る場合も、「生命保険料控除」はMAX12万円までしか使えず、ほとんど節税になりません。

 

よくあるフレーズ「生命保険で役員退職金を積み立てましょう!」

65歳くらいで保険解約するのを前提に、長期平準定期保険(100歳定期など)の生命保険に入り、保険解約金による役員退職金の積み立てを勧められるケースもあるかと思います。
「必要な保障が備えられていて、かつ解約時の解約返戻率がある程度高く、安定的に収益を上げられる事業環境がある」場合には有効と言えるでしょう。
保障が必要なく解約返戻率も低いようであれば、保険は使わずに普通に定期預金などで積み立てるほうが良いと言えます。

生命保険で退職金を積み立てるよりも、「小規模企業共済」や「iDeCo(確定拠出年金)」に加入したほうが節税効果も期待できますので、まずはそれらに入り、足りない分を生命保険などで補充するのが良いでしょう。

【ご参考】これだけやれば大丈夫!効果の大きな節税対策7つ(主に起業家向け)

 

60歳くらいからは「保障」より「相続対策」の考えにシフト

前述のとおり、年齢が上がるにつれて子供も独立していき必要な保障額が減少していきますので、「保障」の役割はなくなっていきます。
一方で、相続対策として生命保険を使える場面が多くなっていきます。
例えば、以下の様なメリットがあります。

・法定相続人×500万円までは非課税
・生命保険の保険金は受取人固有の財産になり、遺産分割の対象外
・相続放棄する場合、銀行預金は取られても生命保険の保険金は取られない

法人税などは課税の繰延に過ぎないと述べましたが、相続税の観点ではまぎれもなく節税になります。

 

番外:医療保険は必要?

日本の健康保険制度は優れており、高額療養費制度や傷病手当金(社会保険のみ)など手厚い保障が用意されています。ですので、わざわざ医療保険に別途入る必要はないかと個人的に思います。
入るとしても、都道府県民共済の「入院保障」+「医療特約」(月3,000円程度の掛け金)などで、リーズナブルで十分な保障が得られます。

・高額療養費制度:手術を受けたりなど医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた部分が払い戻される制度

・傷病手当金制度:病気やけがの療養のため働くことが出来ない場合に、標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給される制度
(役員も支給対象になります。ただし、手当金の受給中は役員報酬の支給を止める必要があります。)

また、経営者向けの労災として、「日本フルハップ」なども月々1,500円から加入でき、おすすめです。


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河野 岳友
沖縄・大阪の融資・事業再生に力を入れている税理士です。日本政策金融公庫の創業融資には特に力を入れています。会計・税務だけでなく、資金調達や経営改善により「会社にお金が残る仕組みづくり」をお手伝いしております。また、クラウド会計やITを積極活用して、経理の効率化を推進しています。
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